年末のごあいさつ
今年も残りわずかとなりました。
来年も皆様にとって実り多き年となりますようご祈念いたします。

健康寿命
健康で長生きをしたいというのは人間誰でも望むことです。昨今では「健康寿命」なる言葉も出てきました。テレビを見ても、健康を扱った番組はかなり以前から多いように感じます。それだけ人々の関心が高いのは、やはり日本が世界的に見てもトップクラスの長寿国だからでしょう。長い老後を健康で生き抜くためにはどうすればいいのか、これはかなり切実な問題です。
しかし、人生百年時代という言葉通り、百歳まで生きた人、不幸にも病気や事故で平均寿命に至らずに命を落とした人、どちらの人の人生もその人にとってはかけがえのないものであることに間違いありません。そう考えると、人生の長さというものには大して意味が無いようにも思えてきます。
自分の寿命をどのように終えるのか。長い老後をもてあますのではなく、短くても意味のある人生を送りたいものです。

科学者の矜持
10月はノーベル賞月間でした。ノーベル賞はダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルの遺産が用いられて創設されました。彼はダイナマイトの他におよそ350の特許を持った実業家で、巨額の資産を築き上げましたが、ダイナマイトはすぐに兵器に応用され、多くの人の命を奪いました。フランスのある新聞はノーベルのことを「死の商人」と呼び、それにショックを受けた彼は、人類の幸福に寄与した科学者に贈る賞の創設を遺言として残したのです。
さて、ノーベルが死去する前年、ドイツのヴィルヘルム・レントゲンがX線を発見しました。何でも透過するX線はすぐに医療に応用され、画期的な診断ツールとして、現在でもCTを初めとする先端医療機器に用いられているほか、空港の手荷物検査、建物の非破壊検査等幅広く活用されています。レントゲンはこの功績が認められて栄えあるノーベル物理学賞受賞第一号に選ばれました。
ところで、ノーベルが自分の発明により巨額の利益を得た一方で、レントゲンは自らの発見を個人の業績とすることを潔しとせず、特許を申請しませんでした。もしも、レントゲンがX線に関して特許を申請し認められていたならば、恐らくノーベル以上の、巨万の富を築くことができたでしょう。しかしレントゲンは自身の発見を自分のものとせず、ノーベル賞の賞金も大学に寄付しました。
先月、ノーベル医学生理学賞受賞を受賞した京都大学の本庶祐先生もノーベル賞の賞金は大学に寄付し、開発されたがん治療薬「オプジーボ」の特許料収入も後進の育成のための基金に充てるそうです。これを科学者としての高潔な精神というのでしょう。


オプジーボ
この文章がアップロードされる頃、ノーベル賞の受賞者が発表されていると思います。日本人で有力視されている方々は今年も複数いらっしゃいますが、中でも免疫学の本庶祐(ほんじょたすく)博士が最有力ではないでしょうか。(産経ニュース 9月29日)
本庶博士はがん免疫治療薬「オプジーボ」のもとになるタンパク質を発見しました。これまでの抗がん剤ががん細胞を直接殺してしまうのに対して、オプジーボはがん細胞に対する免疫を活性化させてがん細胞を死滅させるものです。これにより、従来は手術、抗がん剤、放射線という三つのがん治療に加え、新たに免疫治療という新しい治療を臨床に普及させつつあります。
ところで、このオプジーボは当初非常に高価な薬剤でした。2014年に保険適用されたときは100ミリグラム約73万円でした。それが現在では約28万円で当初から6割も安くなっています。
これは製薬会社にとっては痛い話ですが、がんの患者さんにとっては光明です。とはいうものの、オプジーボは当初一部の皮膚がんに適用され、国内の対象患者はおよそ500人くらいだと言われていました。しかし、その後に肺がんなどへ適用が拡大され推定される患者は年に5万人と言われています。適用患者が500人から5万人に増えたわけですから6割の値下げも妥当であると言われています。
実際問題として、100ミリグラム73万円の薬を5万人の患者さんが使ったとして、その費用は莫大なものになります。患者さんは保険適用なので一部負担ですが、国が支払う薬価を考えると、やはり値下げは妥当なのだと思えます。

魔女の一撃
座卓で書き物をして立ち上がろうとしたときにぎっくり腰をやってしまい、先週はずっと腰痛に悩まされていました。
一時間ほど同じ姿勢のままで、それから立ち上がろうとしたときに腰に痛みが走りました。あっと思ったときにはすでに遅く、息がとまるくらいの激痛に襲われました。経験した人なら分かるでしょうが、まさに腰が「ぎっくり」なる感覚です。西洋では、ぎっくり腰のことを「魔女の一撃」というそうですが、言い得て妙とはこのことでしょう。
以前にもやったことがあるので、こういう時は何をしても無駄で、ひたすら痛みが治まるのを待つしかないということは分かっていました。だからシップを貼るなど、特別なこともせずに、毎日腰をかばいながら、少なくともこれ以上ひどくならないように気を付けていました。
NHKなどで紹介されていたのでご存知の方もいると思いますが、ぎっくり腰になったら下手に安静にせず、できるだけ普段通りの日常生活を送った方が治りが早いそうです。どういう訳でそうなのかは調べたけれど分かりませんでした。
とまれ、自分もできるだけ普段と同じように立ったり座ったり、歩いたりしていました。そうしておよそ一週間経過した頃、動くたびに痛みが走っていた腰がすっかり軽くなりました。これで痛みが完全に消えたら一安心ですね。