OECD(経済協力開発機構)の統計によると、日本の人口千人当たりの医師数は2.3人でOECD平均の3.2人を下回っており、深刻な医師不足の状態にあります。(2013年時点)
日本の医師不足の問題については報道等により、よくご存知かと思います。戦後しばらくして国民皆保険制度が実現し、医師の確保が求められ、各県に医学部が設置されました。しかしその後、医師数の増加が医療費の増加につながると言う懸念から、政府は医学部定員をずっと低く抑えてきました。これが現在の医師不足の一つの原因となりました。
それから政府は方針転換し、医師数を増やすことを決め、平成20年から現在まで約1500人医学部定員を増やしました。また、1つの県に1つの医学部という構想が実現した1979年以降、ずっと見合されていた新規の医学部創設も行われました。そして現在、日本にはおよそ80の医学部、医科大学があります。しかし、医師不足はまだ解消されてはおりません。
ところで、日本で深刻な医師不足になったのはこれが初めてではありません。太平洋戦争中、軍医として医師を国外の前線に送り込んだために国内で診療する医師が不足しました。当時、医師になるためには、大学を卒業し医学士と医師免許を取得するコースと、医学専門学校を卒業し医師免許を取得する二つのコースがありました。戦時中、政府はこのうち医学専門学校を日本各地に創設しました。こうして医学専門学校をはじめとする医学校の合計はおよそ70校となりました。(これらは戦後になって整理され、最終的には46校になりました。)
これはちょっとびっくりします。太平洋や東南アジア全域に軍隊を展開して戦争をし、多くの軍医が駆り出されていた頃よりも多くの学校がありながら医師が不足しているわけです。ある意味で、今の日本の状況は戦時中よりも悪いと言えるのでしょうか。いずれにしても、この問題は人々の健康にかかわる問題です。もっと市民を巻き込んだ議論になってほしいと思います。