先月のブログで、日本の人口千人あたりの医師数は2.3人で、OECD加盟国の平均にも達しておらず、深刻な医師不足の状態にあると書きました。
このことを友人に話したところ、「病院も診療所も、あちこちにたくさんあるのに医師が不足しているのか」と聞かれました。
実は、先月のブログで紹介したOECDの統計によると、日本の病院数、病床数、CT等の先端医療機器の数は先進国の中でも突出して多いのです。このことから、日本では医療施設や医療機器と言ったハード面の充実を重視していたことが分かります。
次に患者の受診回数や入院日数は、日本は他の国に比べたら非常に多く、言うなれば多数の患者を少ない医師で診療していることになります。
ところで、先月のブログで、当初医師数の増加は医療費の増加につながるという理由で政府は医学部定員を低く抑えてきたと書きました。実際に日本の医療費のGDPに対する割合は国民皆保険制度があるにも関わらず低く抑えられていましたが、2000年代に入ってから急激に増加し、今ではほぼOECD平均値に追いついています。主な原因は高齢化によるものと考えられています。
医療費の割合が非常に高いアメリカでは市場主義による医療費の抑制がうまくいっておらず、ドイツやフランスも医療費の割合が高く財政圧迫の要因となっています。逆にイギリスやイタリアは政府が医療費の支出に消極的だったために割合は非常に低いものの、患者が専門医を受診できるまでずっと待たされる「医療待機」という問題を抱えています。
戦後、日本の医療制度は他の国に比べればうまく機能していたのではないでしょうか。しかし、時代は変化しつつあります。せっかく世界に誇れる医療を構築してきたのに、今に至って持続可能な医療制度への移行、高齢化社会に対応した医療と介護の確立は必ずしもうまく軌道に乗っているとは言えない状況です。これまでの不安定な政権から、良くも悪くも、安定した長期政権が期待できる今、将来を見据えた改革が望まれるところです。

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