通勤途中に大分大学医学部の前の交差点で信号待ちをしていると、たまに大きなローター音が聞こえます。大分大学医学部附属病院救命救急センターのドクターヘリです。
この救命救急センターは大分県のほぼ中心に位置しており、ここから大分県全域どこでも20分以内で到着できるそうです。救急車に比べてはるかに素早い対応が可能となります。日本に先んじてドクターヘリを導入したドイツでは、導入前に比べて交通事故の死亡者数が劇的に減少したと言われています。
さて、このドクターヘリは救急車と同じで緊急時には誰でも搬送してくれるし、出動した際の費用は一切かかりません。これらの維持や運営費は地方自治体が負担し、国もそれに対して補助金を出しています。わたしはいつも思うのですが、このように、誰でも平等に軽い負担で医療を受けられる我が国の制度は素晴らしいと思います。
しかし、先ごろ大筋合意したと言われるTPPには、医療分野も含まれていています。また折しも今の政府は医療法や医師法による規制を大胆に緩和しようとしています。日本の先端医療は、重要な成長戦略の要、日本の経済成長に貢献する分野だということです。医療を競争力のある「日本の産業」または「ビジネス」と捉えた発想です。
確かに営利追求と競争は成長の原動力だと思います。しかし、何から何まで競争原理を持ち込めば良いというわけではありません。そもそも「いのち」と「健康」は、貨幣価値に換算できないのです。だからそこに競争原理はそぐわないのではないでしょうか。
変えるべきことは変える勇気を、変えないで良いものは変えない賢明さが求められているように思います。

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