人口減少、オリンピック建設需要などにより、介護分野では2025年までに最大250万人の介護人材が必要と推計され「100万人不足」という危機感が業界に重く垂れこめている。(日経ヘルスケア20145月号より「霞が関リレーコラム厚労官僚の独白」より)
介護業界の人手不足は今に始まったことではありません。高い離職率、過酷な労働環境、賃金水準の低さが知れ渡り、若い人を中心に介護離れが進んでいます。また景気の回復局面に入れば、敢えて介護職を選ぶ人はますます減少することでしょう。
上記の記事は厚労省の官僚が書いたものです。この官僚氏は、「介護者自らが誇りを持ち、研さんに励むプロ集団として社会の尊敬を勝ちうる仕事(専門職)」となれば介護を志す人が増えて自ずと人手不足は解消される、と確かにその通りなんですが、そのためには、「雇用主自らが介護職を専門職に育て上げる役割を担うことが肝要」と言っています。これにはいささか失望しました。
介護事業には定員があります。だからどんなに人や設備に投資して付加価値を充実させても定員一杯になれば売上はそれ以上増えません。だから経営者として利益を最大化させるためには人件費や経費を徹底的に削減する以外にないのです。特に人件費は真っ先に削減されます。介護の現場で働いている人は必ずしも専門教育を受け、経験を積んだ人たちばかりではありません。人件費削減のために資格や経験のないパートタイマーの職員を活用して人件費削減を行っている事業所がほとんどです。そんな状況で職員を専門職に育て上げるなどどだい無理な話。そんなお金も余裕もないのです。厚労省の官僚はこのことを認識しているのでしょうか。
日本の社会保障は屋台骨から直さないと非常に危うい状況にあると叫ばれ、社会保障と税の一体改革が進められています。医療、介護の分野で大きな動きが予想されますが、こういう時に迷走しないようにしっかりと現実把握をしたうえで改革に望んでほしいと思います。

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