さて、ノーベルが死去する前年、ドイツのヴィルヘルム・レントゲンがX線を発見しました。何でも透過するX線はすぐに医療に応用され、画期的な診断ツールとして、現在でもCTを初めとする先端医療機器に用いられているほか、空港の手荷物検査、建物の非破壊検査等幅広く活用されています。レントゲンはこの功績が認められて栄えあるノーベル物理学賞受賞第一号に選ばれました。
ところで、ノーベルが自分の発明により巨額の利益を得た一方で、レントゲンは自らの発見を個人の業績とすることを潔しとせず、特許を申請しませんでした。もしも、レントゲンがX線に関して特許を申請し認められていたならば、恐らくノーベル以上の、巨万の富を築くことができたでしょう。しかしレントゲンは自身の発見を自分のものとせず、ノーベル賞の賞金も大学に寄付しました。
先月、ノーベル医学生理学賞受賞を受賞した京都大学の本庶祐先生もノーベル賞の賞金は大学に寄付し、開発されたがん治療薬「オプジーボ」の特許料収入も後進の育成のための基金に充てるそうです。これを科学者としての高潔な精神というのでしょう。 <<戻る>>